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業務用

 

「業務用」は、かっこいい。

たぶんこの思いは広く共有されている。

 

地元に業務スーパーができたばかりの頃、特に意味もなく通った。普通のスーパーと異なり、背の低い冷凍ケースばかりがズラリと並ぶ店内で、鶏もも肉だの、豚バラ肉だのを見て回った。あの緑地に白抜きの、無骨な看板を懐かしく思う。

 

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「アニキ、うちはデザインなんざ気にしやせんぜ。コスパが命です。」

 

なぜか私の中の業務スーパーは、少し背の低い、子分が似合う男だった。

 

「アニキ、お安くしときますぜ。」

 

「アニキ、これを見てくだせえ。ノリです。」

 

ヤマト 液体のり アラビックヤマト 補充用 400ml NA-960

 

無駄にノリを買った。アラビックヤマト詰め替え用400mlだった。学校の先生が職員室からたまに持って来るアレである。容器の下に、なんというか、リボルバー式の弾倉のように、子アラビックヤマトのキャップがついているやつだ。これはかっこいい。弾倉をつけたり外したり、眺めたりして遊んだ。のりはスティックノリ派だったので終ぞ使うことはなかった。

 

 

業務用。

この響きにたくさんの人が魅せられる。ちなみにアラビックヤマト詰め替え用は業務用ではない。単に詰め替え用で、学校でよく使われるから先生が持っていただけである。

 

業務用とは一体なんなのか。大量ということか。デザインが洗練されていないということか。

 

「アニキ、業務用は、業務用です。」

 

そういうことにしておこう。

定義なんてどうでもいい、業務用は業務用で、業務用はかっこいい。Amazonの手先になったので紹介しておく。私が何度も購入している「業務用」たちだ。

 

 

 

 

 

 

黒瀬ペットフード プロショップ専用 mania 文鳥 3L

黒瀬ペットフード プロショップ専用 mania 文鳥 3L

 

 特に最後の文鳥の餌は良い。「プロショップ専用」と明記されている。買うしかなかった。買った。思ったよりデザインが洗練されていたが、満足いった。私が満足したわけでなく、鳥が。毎日美味しそうに食べている。少しずつ太ってきた。鳥の平均体重は25gなので、1g増えるだけで太ったと言えるのだ。

 

鳥はどうでもいい。Amazonの商品を売りたいわけでもない。

 

コストコだ。コストコの話をしよう。

 

私はコストコについて詳しく知らない。業務スーパーに近いところは感じているけれど、コストコは決して業務用ではない。聞くところ、昔のmixiのように、紹介制をとっているらしい。前のバイト先のマダムが、「これコストコで買ったのよ!」と言ってナッツのケーキをくれたことがある。

 

美味しかった…。

茶色いボール紙のケース。上面は円形に窓がついており、透明なフィルムが貼られている。決しておしゃれではないが、無骨でもない。そして何よりでかかった。

 

陳列棚も、どうやら大量に商品が積まれた簡易なものらしい。うず高く商品が積まれた広大な店内を客は自由に回り、これまた巨大なカートにぽんぽん放り込んでいく…。

 

きっとドンキホーテとは違う。ドンキホーテは多種多様な商品を、少量ずつ集めているから、あんなジャングルみたくなっているのだ。コストコは違う。コストコは、「ミックスナッツ」と棚に書いたからにはミックスナッツばかりを数千ばかり陳列する。棚の端から端までミックスナッツだ。ケースも全て同じだ。200gなど売らない。全て1000gだ。買いたければ買え。買えないなら来るな。ここはお前にはまだ早い…。

 

繰り返すが私はコストコに行ったことはない。

 

この頃、日増しにコストコに心が引っ張られている。業務スーパーよりすごいのか?会員になるにはどうしたらいいんだ?どこにあるのだ?どこにあるのだ?どこにあるのだ?

 

そんな折、山形の実家からLINEが届いた。

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コストコでございます♫」

 

コストコだと!?山形にコストコが!?

ちくしょうしてやられた、こんなはずじゃなかった!俺は東京に出てきた!やりたいことはなんでもやれる!東京!そう東京だ!コストコでミックスナッツでも買って実家に土産にもっていこう!

「これどごで買ったんだべ?」

コストコだぜ!」

コストコ?何だべそりゃ?」

コストココストコだぜ!東京はすごいんだぜ!(金色に輝く会員カードを見せる)」

 

そんな思いが一瞬でへし折られた。
悔しい。私だっていつの日かコストコで大量買いしてやろうと、思いを新たにした。

 

 

ところで、業務スーパーが子分肌の小男なら、私の中のコストコはAIだ。もはや人ではない。話すこともない。店内にBGMはない。だが、こちらから話しかけることはできる。

 

「あれ、ミックスナッツが見つかんねえなあ…」

 

「(チカ6カイのミギオクニアリマス)」

 

コストコは脳内に直接話しかけてくる。客は店内にまばらにいるが、それぞれがそれぞれ、コストコにより誘導されている。

 

「スーパーカップはどこかなあ…」

「(3カイデス)」

「超バニラ味はどこかなあ…」

「(ヒダリニ180メートル)」

「(ナンコカオウカナア…)」

「(アルダケスベテ、カードデハラオウ)」

 

そしてコストコに乗っ取られる。