考えなしに釣行するから釣れないのじゃないか。
14回の敗北を経て私はそう考えた。
海水温。
釣果を左右するファクターの中で、比較的理解しやすいそれに飛びついた。
サクラマス含む変温動物は、低い温度で代謝が低くなり動かなくなる。代謝が低いから、食べなくてもよいのだ。
逆に温度が高ければ活性が上がる。食べなくては腹がすくからだ。
ある筋によれば、サクラマスが活性となるのは海水温11〜15度、もっとも望ましいのは12度とのことだ。
では、今回の釣行先としてベストなのは?
気象庁のデータと、あるアプリの情報から、
20日の午前は浜益方面よりも積丹、それも西積丹が海水温が高い。岩内は低いようだ。
また積丹の先端、神威岬や幌武威のあたりはどうも風が強い。よって除外。
つまり、神恵内から泊にかけて。
こうして今回の釣行先が決定した。
23時、札幌を出発。
そして3時過ぎには浜益に降り立った。
あれだけ考え抜いて神恵内と決めたのになぜ浜益にいるのか?
なんとなくであった。
なんとなく、左に曲がるべきところをくいっと右折してしまった。しかも二段階右折で。
石狩新港もなんかマメイカ釣れてるらしいし…ほら….もしサクラマス釣れなくてもさ…イカがさ…美味しいしさ…
情けない理由で樽川埠頭に着いたのは23:45。
しかし人が…人が多い…。
子供づれまでいる…。
今日が土日であることをすっかり忘れていたのだ。
樽川埠頭を諦め花畔、小さい港、東埠頭とぐるぐる回るも、どこも満員。その上強風である。
新港を諦め北上する。
石狩河口大橋を渡り、しばらく道なり。
このあたりまでくると電灯がまばらになり、暗い道を進んで行く。
心なしかほんの少し露出する顎のあたりがひりひり痛む。まるで冬だ。
望来のあたりで霧が深くなり始めた。
ヘルメットのシールドはすぐに水滴で見えなくなる。
何度か拭ってみたがいまいち変わらない。霧が立ち込めている。
帰ろうか…。サクラマス釣れへんやろ…。
深夜1時。
道の駅あいろーど厚田に吸い寄せられる。
あまりに寒い。
20台ほどの車が車中泊していた。
あいろーど厚田の夜間解放スペースは若干空調が効いており、外よりは暖かかった。2台ある自販機で「あたたか〜い」を探すも、「つめた〜い」しかない。
さむ〜い。
しょうがなくトイレに入り用を足した。
手を洗うと、気のせいか水があたたかい。
気のせいでも良いかと考えつつ手を洗っていると、やはりあたたかい。
ありがとうあいろーど厚田。
夜中にあたたかい水で手を洗わせてくれてありがとう…。
そうして浜益に着いたのが3時過ぎ。
この季節、日の出こそ4時過ぎだが、実は3時にはもうかなり明るい。
東に山の稜線がくっきり見える。
空は星がよく見え、同時に日の出を迎える。
かなり、かなり美しい景色だ。
さて良い景色も見れたし帰ろうか…
帰りたい…。
釣り場に着き、のそのそと準備をする。
今回も毘砂別生活館裏に決めた。
風はない。波もない…凪に近い。
3時半には開始したが、すでに周りに20人ほど。
日曜日の浜益、すごい。
つくづく不定休で良かったと考える。
せっかくの休みにこんな混雑なんて…
実は先日購入したラテオ106M・Qのデビュー戦。
結局ソルパラ君9.6フィートはホッケのみで終わってしまった。ラテオではサクラマスを釣ってあげたい。
そうこうしているうちに左側二つ隣の釣り人にヒット。
40cm強のサイズ。
使用ルアーはシルバーのミノーで、遠投ののち中ほどで食ってきたとのこと。
周りのアングラーも気合が入るがその後しばらくヒットなし。
次のヒットは6時、右隣の釣り人さん。
50cm強だろうか?やはり熟練の方のようで、波打ち際で走るサクラマスを丁寧にランディング。
ミノーでは食いがなかったためジグを遠投したら沖目で食ってきたとのこと。
私も同じカラーのジグにつけかえ精一杯遠投するが、アタリすらない。
6:30、胃腸が限界を迎えたため一旦戦線離脱。セイコーマートへ。
7時には復帰したが、あれだけ居た釣り人は半分ほどになっている。
あれから釣れてもなさそうだ。
そのまま砂浜で横になり、10時まで熟睡した。
今回、なんとなくで浜益へ釣行したものの、運良くサクラマスを観測することができた。
ただ、跳ねが全く見られなかったのが気になる。
回遊してくれば跳ねが見られ、その瞬間に戦闘開始する、という前回学んだ教訓は有効なのか?
跳ねが無くとも釣れてしまった。
活性は必ずしも高くなく、偶然釣られてしまったのだろうか。
群れという言い方をよく聞くが、今回はあれだけ釣り人がいたのにどちらも単発で、続かなかった。
ハイプレッシャーの状況下では変わるのか?
あれだけの数の釣り人が重りを海面にドッボンドッボン投入していれば、音に敏感な彼らは警戒するだろう。
その中でドジった中小型が釣られてしまったのだろうか。
10時に起き、30分ほどうだうだした。
この時点で見える範囲に釣り人は7名ほど。
沖を指差しなんだかざわざわしている。
跳ねか?回遊が来たのか?
目をやると、水面から黒い三角形のヒレがゆらゆら動いている。サメか!?
イルカらしかった。
イルカだのトドだのアザラシだのが釣り場に来ると、サクラマスは逃げていってしまうらしい。
ものの30分で本当に私ひとりになってしまった。
導流堤から引き上げて来た人に様子を聞いた。
導流堤も朝一に5本、またヒラメが1本上がったとのことで、先端側が調子が良かったとのこと。
しかし混雑がとてつもなく、まるでサケ釣りのようだったと。
私もセコマへ向かう途中に覗いたが、あれは……
正直釣りではない。
昼にかけ潮が満ち、波が立ちはじめた。
1メートル程度だろうか?
さきほどまでゴロゴロしていた砂浜はもうすでに海中である。
通りがかった地元の元漁師さんにお話を伺う。
浜の地形に変化があり、波の立たないところが深く、離岸流が出ており、好ポイントとのこと。
今回は時化始めたおかげで、私も海底の地形を把握することができた。
やはりポイントは案外少ないようで、実際に今朝釣れたポイントもその中の一つである。
12時。
釣り人がいないため選び放題、
かつ釣り人によるプレッシャーもだいぶ緩和されている。
一級ポイントの一つに入釣し、第2部を開始。
1時間振って、休憩。を繰り返す。
そのうちについさっき入ってきたばかりの方が、ポイントの一つ、先ほどまで私がいた場所でサクラマスを釣り上げた。
なんでだよ……そこ釣れなかったよ…。
やはり腕の差かと悲嘆しながらも続けるも、タイムリミット。
渋々16時に納竿した。
今回もサクラは釣れなかったが、だいぶ肉薄した感がある。
まずポイントを把握できたし、跳ねが無くとも魚がいることがわかった。
今回は波打ち際にベイトも見られず、もちろんボイルも無し、波も微妙で、あまり良いコンディションとは言えなかったが、それでもサクラマスは釣れた。
次回釣行時にそのイメージを持ちながら竿を振ることができる。
15連敗。